果たして、シード選手として二回戦から出場したサムは、圧倒的な強さを見せる。他流派の池田貴広から右の飛び後ろ蹴りで一本勝ちを挙げると、続いて地元からユースジャパンに選ばれた酒井瑞樹と対戦。縦蹴りを得意とする酒井と華麗な大技対決を展開するだけでなく、中盤から突きと下段の猛ラッシュをかけ、本戦で優勢勝ちを収める。
準決勝は、ベテラン・井上達二との対戦。44歳にして大会に挑み続けている井上にも、サムは序盤から圧力をかけていった。今大会で多用していたヴァレリーキックと突きのコンビネーションで主導権を握り、ラスト30秒、ノンストップのラッシュを見せて決勝進出を決めた。
決勝戦の相手は、3年前に優勝を果たし、2年連続で準優勝を収めてきた河本史朗だった。日本代表メンバーの鈴木国博、塚本徳臣、塚越孝行、野本尚裕が審判を務める舞台で、最後の闘いが始まった。今大会でも安定感のある攻めで勝ち上がってきた河本に対し、サムはパワフルな突きからヴァレリーキックや下段廻し蹴りを叩き込む。あまりの圧力に河本も後退せざるを得ない。ラストは猛ラッシュで河本に攻撃のチャンスを与えず、サムは全四国制覇を成し遂げた。「少し強くなったと思う」高知で稽古に明け暮れていた日々から7年。サムは試合後、”もう一つの故郷”で優勝できたことを喜びつつも、少し恥ずかしそうに顔を緩ませて語った。だがサムの挑戦は、これで終わらない。4週間後には、全関東大会が控えているのだ。「まだ満足してない。もっと練習しないと。でも、全関西とは違う技が少しできたから、全関東ではまた違う技を試してみたい」と、25歳のサムは意気込みを新たにしていた。また、そんな伸び盛りのサムに真っ向勝負を見せた河本は、仕事をしながら稽古時間を作り挑戦を続けている選手だ。課題である相手のスピーディーな技への対応を強化し、5月19〜20日のウエイト制大会に挑む決意を固めていた。上位に食い込んだ次世代選手たちも、着実に進化を遂げているようだ。準決勝までコマを進めた中嶋幸作(滋賀)は、昨年に続き3位入賞。ユースの酒井は、「ユースに選ばれて一皮向けてきた。最後まで勝とうとがんばっていた」と師匠である三好師範の評価を得ていた。上位進出を果たした選手たちの中には、ウエイト制に出場する選手も多い。四国から世界へ。彼らの今後の活躍に期待がかかる。
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