のどかな田園風景が広がる土佐の地に、今年も幼年から壮年までの猛者たちが集まった。その数、じつに495名。24回目を数える全四国大会に出場するためだ。四国の新極真の盛り上がりを物語っている。
また今大会は、身体障害者チャリティーと青少年育成を謳い、身障者や小学生までの観客は無料で観戦できるシステムとなっている。そのため朝から多くの観客が会場に駆けつけ大賑わいを見せた。
会場に敷かれた5面のコートで、午前9時半から激闘がスタート。とくに光っていたのは、一般上級の部にエントリーしたオーストラリア出身のサム・ギルバートだった。
「尊敬している三好(一男)師範に自分の稽古の成果を見せたくて」
母国・オーストラリアで開催された第9回世界大会選抜戦で優勝し、代表権を獲得したサムは、流暢な日本語でそう語った。第8回世界大会にも母国を代表して参戦した彼は、18歳の時、空手を学ぶために日本を訪れた過去がある。その際に、初めて門を叩いた道場が三好師範の指導する高知支部だった。
三好師範が当時をふり返る。
「彼は空手を学びたい一心でやってきたんです。貪欲な選手で、竹澤(剛)と一緒に生活して、半年間、私のところで空手を学びました」
その後、サムは日本各地の道場を巡り、着実に実力を伸ばしてきた。現在は、東京で塚本徳臣や久野浄英との稽古に励んでいる。試合にも積極的に出場してきた。昨年末には、全関西大会に参戦。ユースジャパンの池田真哉や全日本マスターズ二連覇の実績を誇る扇谷卓哉を破り、日本に来てから初の優勝トロフィを手にした。そして今回、全四国制覇に挑んだのである。出場を決めた理由には、もちろん世界大会もある。
「世界大会に向けて、自分の技を確認したかった」”実戦は最大の稽古”と言われる。サムも夢の世界大会で勝つために、実戦での実力アップを狙っていた。さらに、もう一つ理由がある。それは高知での大会だからだ。
「初心に戻ろうと思って」
世界大会の前に、この地で優勝することは、彼にとってとても重要な意味があった。
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