匠直伝!ズバッとわかるテクニック

上段廻し蹴り

さまざまなテクニックのコツを、その技のエキスパートに聞く「匠直伝! ズバッとわかるテクニック」。
今回のテーマは「上段廻し蹴り」。解説を務める匠は“カミソリキック”の異名を持つ上段廻し蹴りで一本・技有りの山を築き、ウェイト制大会を6度制覇。世界大会にも出場するなど軽量級に一時代を築いた山本健策四段です。


相手の心理も操作できる技

上段廻し蹴りは、元気でピンピンしている相手を一撃で倒せる技です。突きや下段廻し蹴りであれば、何発も蹴らないと効かせることは難しい。しかし上段廻し蹴りは、一瞬で劣勢を覆すことができるのです。そのため、覚えているとじつに有利に試合を運ぶことができます。
コンビネーションとしては、下段や中段の蹴りからつなぐのがセオリー。一方、逆に上段廻し蹴りを見せ技にすることもあります。私が現役の頃は、上段廻し蹴りを決め技と見せ技にする割合が半々くらいでした。もしかしたら、見せ技にすることのほうが多かったくらいかもしれません。一発で決まる技だけに、ほとんどの相手は上段廻し蹴りを警戒します。それだけに、見せ技にすることがひじょうに有効なのです。
強烈な上段廻し蹴りを身につけているだけで、相手の心理を操作でき、リズムをぐっと崩しやすくなります。うまく使って、優位に試合を運んでください。

”攻”と”受”のアイコンについての説明

このページで紹介する技術は、次の2つに分けることができる。
身につけたい技術を探す参考にしよう。

攻
自分から仕掛ける上段廻し蹴り
受
相手の攻撃に合わせる上段廻し蹴り

上段廻し蹴りの基礎知識

上段廻し蹴りを稽古する前に、これだけは知っておこう!!

STEP1
上段廻し蹴りを狙う場所は?

STEP2
どこで蹴るといいの?

 

首より上がヒットポイントになる。アゴとこめかみ、首筋は脳を揺らせやすい。また、顔正面もダメージを与えやすい。おでこや髪の毛が生えているところはひじょうに固いので、かえって自分の足を痛めてしまう恐れがある。狙わないようにしよう。

 

つま先から足首までの範囲内で蹴る。蹴る際は、足甘を曲げないほうがいい。スピードが遅くなってしまう。



STEP3
正しいストレッチをやろう

STEP4
フォームを整えよう

上段廻し蹴りの稽古をする際は、しっかりとストレッチをすること。ただし開脚のやわらかさは、必ずしも上段廻し蹴りのしなやかさとイコールにはならない。写真のような逆正座になるストレッチのように、股関節を伸ばすことが上段廻し蹴りのしなやかさにつながる。

 

蹴り足の高さは、ヒザの抱え込みの高さと直結する。壁に手をつき、少しでも高い位置にヒザを上げられるようにすること。慣れてきたら、蹴り足を伸ばしてフォームをさらに整える。写真のように補助者に蹴り足を持ってもらい、壁に手をついて行なうといい。腰をしっかり入れること。また、軸足のカカトを相手のほうへ向けること。



STEP5
蹴り足をすくい上げないように

STEP6
小さい的を蹴り込もう

すくい上げるような蹴り方では、窮屈になってうまく蹴れない。腰をしっかり入れ、脇腹をやわらかくして蹴ることで、スムーズに上段廻し蹴りを放てるようになる。

 

蹴り込む際は、サンドバッグなどの重いものを蹴らないほうがいい。慣れないうちは重さに負けないように押し込みながら蹴ってしまいがちなので、上段廻し蹴りの生命線とも言えるスピードやキレが失われてしまう。まずは、パートナーの手のひらを軽く蹴り込み、スピードやキレを養うこと。憤れてきたら、パンチミットなどの小さな的を鋭く蹴り込むといい



前足での上段廻し蹴り

よりスピーディーな動作で放つ前足での上段廻し蹴りの基本的なバリエーション

パターン1 攻
蹴り足を戻す上段廻し蹴り

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パターン2 攻
前蹴りからつなぐ

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@構えた状態から、AB前足でスピーディーな上段廻し蹴りを放つ。Cヒットしたら、すかさず蹴り足を戻す。上段廻し蹴りは、この方法が基本となる。振り抜く上段廻し蹴りも使うことは多いが、そればかりやっていると、この蹴り足を戻すやり方ができなくなってしまう。なお、振り抜く蹴りを稽古する際は、ミットなどの手前や上を空蹴りするのがいい。

前足の前蹴りからつなぐコンビネーション。@構えた状態から、A前足でけん制の前蹴りを放つ。Bすかさず蹴り足を戻し、C今度は前足で上段廻し蹴りを放つ。動き出しのヒザの高さをなるべく変えずに蹴ることで、直前の前蹴りと軌道を錯覚させることができる。



パターン3 攻
相手の心理を操作する

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上段廻し蹴りをおとりに使うことで、ほかの蹴り技を当てやすくする。@構えた状態から、A上段廻し蹴り。Bすぐに蹴り足を戻して、C右足を踏み込んで下段廻し蹴り。上段廻し蹴りは警戒されやすい。その心理を逆手にとったコンビネーションだ。

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奥足での上段廻し蹴り

力強い一撃で勝負を決める奥足での上段廻し蹴りのバリエーション

パターン1 攻
踏み込む上段廻し蹴り

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一歩踏み込んでから放つ上段廻し蹴り。@構えた状態から、A移動稽古のようにスッと踏み込む。同時に蹴り足を上げ、B上段廻し蹴り。踏み込みの足に軽く体重を乗せ、後ろ足と前足の重心の比率が6:4くらいになるのが理想。

 

パターン2 攻
相手のガードを操作する

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@構えた状態から、A中段廻し蹴り。これを数度繰り返す。B相手のガードが下がってきたら、C上段廻し蹴りを叩き込む。奥足の上段廻し蹴りはモーションが大きいので、ほかの蹴り技と織り交ぜて命中しやすくする。中段の代わりに下段廻し蹴りを使ってもいい。



パターン3 攻
相手の心理を操作する

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前足でも見せた上段廻し蹴りをおとりにしたコンビネーションの別パターン。@構えた状態から、Aいきなり上段廻し蹴りを放つ。B蹴り足を戻さず、そのまま真下に置く。これで、次の蹴りを放つための溜めが生まれる。C空いたボディへ三日月蹴りを叩き込む。

 

パターン4 攻
突きへのカウンター

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@A接近戦から相手が突きを放ってきた。そのうちの一発を払う。B同時に、相手の突きと同じ側の足で上段廻し蹴りを放つ。上級者であれば、突きに直接上段廻し蹴りを合わせてもいい。




応用テクニック

匠が伝授する、試合で役立つスペシャルテクニック!

パターン1 攻
軌道を隠す上段廻し蹴り

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突きを使って上段廻し蹴りの軌道を隠す。@構えた状態から、A順突き。Bすかさず逆突きを放ち、C拳を戻すことなくヒザを上げる。D上段廻し蹴りを叩き込む。Eは、Cを正面から見たところ。拳に意識がいくため、死角が生まれる。




パターン2 受
打ち合いからカウンターを誘う

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@打ち合いの中から、A意識的に距離を置く。スムーズに離れ、距離を取りすぎないこと。Bすると、相手は自然と距離を詰めてくる。C入り際に合わせて、前足でスピーディーな上段廻し蹴りを放つ。これも、相手の意識を操作した技と言える。




パターン3 受
下段廻し蹴りへのカウンター

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パターン4 攻
回り込んで放つ上段廻し蹴り

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@構えた状態から、A相手が下段廻し蹴りのモーションに入った。これを察知し、同時に対角線上の足を動かし、B上段廻し蹴りのカウンターを狙う。下段廻し蹴りは、比較的カウンターを合わせやすい技だ。相手が下段廻し蹴りを狙う時は、逆にチャンスでもある。

 

死角に回り込んで、上段廻し蹴りを叩き込むコンビネーション。@構えた状態から、A相手の斜め横に潜り込む。同時に、カギ突きで脇腹を叩く。B相手の意識は腹へと向きがちになるので、そこを突いて上段廻し蹴りを見舞う。




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