全四国大会に吹き荒れた新しい風 世界戦士・長野義徳が復活の狼煙! 三上、西尾ら四国の新勢力との激闘第33回全四国空手道選手権大会
2016年4月10日◎高知市・くろしおアリーナ
カラテライフ2016年7-8月号 Text & Photos/神田勲
長野の胴廻し回転蹴りが三上を襲う。必死で防御する三上。

長野は内股で三上のバランスを崩す。
 
積極的に大技で攻めていく長野。

三上は根性で長野に食い下がる。
 
長野は三上が前に出てくるところに合わせ、見えにくい角度から蹴りを放つ。

昨年は、一般男子上級の部に出場した酒井瑞樹の優勝により、長らく四国以外に流失していた王座が戻ってきた。その王座を守り切れるかが、今大会のテーマと言ってもよかった。 同階級の決勝に上がってきたのは兵庫中央支部の長野義徳と愛媛支部の三上和久。初顔合わせだ。

長野は昨年開催された第11回世界大会に日本代表として出場するも、無念の初戦敗退。捲土重来、再起をかけて闘いに臨んだ。初戦は愛媛支部の谷龍治に判定勝ち。準決勝では、昨年の大会で準優勝した高知支部の新鋭・西尾総悟を下し、世界大会代表選手として格の違いを見せつけた。

対する三上は昨年の大会で優勝した酒井を苦しめ、ベスト4に進出した実績がある。今大会は準決勝で、酒井にリペンジをはたし、決勝進出を決めた。

世界大会代表と超新星の闘いは、静かな立ち上がり。小刻みにリズムを取る三上に対し、長野は落ち着いてじりじりと間合いを詰めていく。両者下段蹴りの相打ちから長野が続けて下段を攻める。

前蹴りで距離を取る三上。しかし、長野はすかさず間合いを詰めて、下段を攻める。両者とも左右に構えをスイッチしながら相手の動きを見る。長野のワンツーからの左上段廻し蹴りが三上の顔面をかすめる。三上は長野の蹴り足に巻き込まれつつも、気合いで立て直し、さらに突きの連打で反撃する。

三上の攻撃をさばいた長野は胴廻し回転蹴りを放つ。三上は再び上体を巻き込まれるが倒れない。世界大会代表選手を相手に恐れることなく向かっていく姿勢はすばらしい。

勝負は判定となる。旗は白が2本、引き分け2本。主審の藤原康晴師範は長野を支持し、3−Oで長野が一般男子上級の部を制した。

試合後、長野は『優勝できてホッとしています。世界大会は不甲斐なかったので、もう一回自分の実力を見極めたいと思って出場しました。ケガはあったのですが、なんとか動けました」と試合を振り返った。

また、連続で四国勢の新鋭2人と闘い、勝利したことについて「どちらも強かったです。元気があってガンガンきてくれたのでやりづらかったです」と健闘を讃えた。さらに、全世界ウエイト制大会については「ぜひ出場したいです。このままでは終われません」と、カザフスタンへの熱い思いを語った。

昨年、四国に奪還した王座は、再び四国以外に流出した。だがその結果は決して悲観するものではない。準優勝の三上、3位の西尾の活躍は四国に新しい風が吹くことを期待させるに十分だった。三上と西尾が近い将来、全四国の王座を争うであろうことは想像に難くない。さらにその後、四国から世界に飛び出す選手が現われるのも、今から楽しみだ。



三上は先輩である昨年王者・酒井瑞樹と対戦し、体重判定で昨年のリベンジをはたす。
 
西尾総悟は長野に臆することなく挑んだが、惜しくも判定に散る。

二回戦、長野は愛媛の谷龍治を退ける。
 
復活の狼煙を上げた長野を緑健児代表が祝福する。
上位入賞者の記念写真。
入賞者と役員・関係者の集合写真。




組手・型、熱戦の続いた各階級 藤原桃萌が女子フルコンタクトを制す団体型、 個人型も熱戦が続く
一般女子フルコンタクトの部決勝戦。体格で勝る藤原が福原を圧倒する。

福原は回り込みながら反撃の機会を伺う。
 
一般女子フルコンタクトの部準決勝。藤原は昨年王者の中野葉子に判定勝ち。

一般女子セーフティー上級の部決勝。川村菜々花(右)が優勝。
 
高校男子上級の部決勝。安光海成(左)が制覇。

中3男子上級の部決勝。瀧本一斗(右)が優勝。
 
壮年(35才以上40才未満)上級の部決勝。久米大介(左)が頂点へ。

壮年(40才以上45才未満)上級の部決勝。山脇義英(左)が優勝。
 
壮年(45才以上)上級の部決勝。西山昭彦(左)が優勝。

一般女子フルコンタクトの部の決勝に上がってきたのは高知支部の福原茉奈と福岡支部の藤原桃萌だった。

福原は準決勝で大阪北支部のベテラン扇谷友美を破っての決勝進出。軽量級ながら、初優勝を目指しての闘いに挑んだ。

対する藤原は一週前に開催された全関東大会からの連戦となるも、初戦は兵庫中央支部の玉置麻衣子を突きとビザ蹴りで圧倒し、続く準決勝では昨年の王者で福原の実姉である中野葉子を破り決勝に進出した。

体重無差別で行なわれたこの試合、56kgの福原に対し、藤原は70s。さらに身長は155mの福原に対し、167mと長身の藤原。身長で12cm、体重差に至っては14sという福原にとっては厳しい体格差がのしかかった。

試合開始の太鼓が鳴らされると、試合序盤は、回り込みながら突き蹴りを放つ福原と、どっしりと構えて突き蹴りを返す藤原の攻防が展開。両者の技が交錯すると、全体重を体ごとぶつけてくるような藤原の突きに、福原は攻めあぐねてしまう。

そして、福原が回り込んで飛び込もうとするところに、藤原の突きのカウンターが襲いかかる。福原の動きは決して悪いわけではないが、体格差を補うまでには至らなかった。

勝負は判定に持ち込まれたものの、4−Oで藤原が勝利した。

この他、全四国大会といえば型の部も充実している。これは主催者である三好一男師範の意向が色濃く反映されているものだ。
「型が巧い選手は組手にも活きてくる。型と組手は表裏一体である」と、つねに三好師範は型の重要性について説いていることから、おのずと大会も型が重視されている。

とくに団体型の部は毎年、熱戦が繰り広げられている。今大会は、決勝に進出してきたのは高知Eと和歌山。どちらも一糸乱れぬ団体型を演じ、甲乙つけがたい内容であったが、僅差で高知Eが勝利した。

型の一般男子上級の部では昨年の王者で香川中央支部の松葉総司が安定感と円熟味のある型を演じ、同クラスにおける連覇をはたした。

型の中学・高校男子上級の部では高知支部の山中湧太・堅太の兄弟が揃って決勝に進出。仲良く兄弟決戦となったものの、兄の湧太が貫録を見せ勝利。今後も兄弟での熱い闘いが繰り広げられることは回違いない。

今大会、四国から王座が流失してしまう階級があったものの、一般男子上級の部では三上和久、西尾総悟ら四国の若手が大健闘した。

大会終了後、三好師範は参戦してくれた長野義徳をねぎらいつつも『長野選手に食い下がる西尾、三上の姿を見て、彼らが世界大会に出場することも夢ではないと思えてきました』と、見えてきた将来への希望を語った。


型(団体)上級の部決勝戦。優勝は高知E。

型(個人)一般男子上級の部決勝戦。優勝は松葉聡司。松葉は連覇をはたした。
 
型(個人)中学・高校女子上級の部決勝戦。優勝は田中利奈。

型(個人)中学・高校男子上級の部決勝戦。優勝は山中湧太。山中は連覇をはたした。
 
大会の選手宣誓は西尾総悟。

開会・閉会太鼓は高知支部・船井孝誠師範代。
 
少年部演武。

ルール説明の模範演武は逢坂祐一郎・徳島西南支部支部長と前川憲司・徳島北東あわじ支部支部長。
 
開場前には日本赤十字の献血車もやってきた。

大会後のパーティーでは緑健児代表と藤原康晴師範の誕生祝が行なわれた。
 
恒例の10本締め。今回は三好一男師範に代わり、奥村幸一師範が号令をかけた。


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