ストーリー
倉内美和は、40歳にして、独身、当然子供もいない。プロのフィギュアスケーターとしてアイスショーなとて活躍する傍ら、子供たちを指導する“コーチ”として働いている。一見、何不自由なく、華やかて充実した人生を送っているように見えたのたか、あるとき、元恋人の子供を預かったことから、新たな人生の歯車か回りたす。そして、オリンピック選手という、かつての夢をとり戻そうとする、彼女の挑戦かはしまる。2月6日(土)より、新宿K's cinema他、全国順次ロートショー
─この作品は、40歳のフィギュアスケートのコーチが、選手としてオリンピックに再挑戦するというストーリーですが、中でも空手が重要なポイントになっています。
室 僕自身、若い頃に『空手バカ一代』を読んで感動したことがあったんです。あと、僕はスポ根世代なので、その影響も大きいですね。たとえば『巨人の星』では星飛雄馬が大リーグボール1号を習得するためにボクシングとか剣道を習うんです。映画の『ロッキー』でもニワトリを追いかけたりしていましたよね(笑)。あるスポーツのためにまったく違うことをする。そういう工夫をするということが、スポ根ものの一番のおもしろさだと思うんです。この作品でも、フィギュアと関係のない何かを入れたかった。そう考えた時に、後ろ廻し蹴りなどの動きがフィギュアのジャンプにオーバーラップしたので、空手しかありませんでした。
─しかも、西田さん演じる倉内美和さんは、新極真会の総本部道場で稽古して、空手の動きを習得していきます。
室 『空手バカ一代』の影響もありますが、やるからには極真空手にしたかった。本物のリアリティを追求したかったので。 西田 私の知人と緑(健児)代表が懇意にさせていただいていたので紹介していただきました。
−砂川久美子選手をはじめ道場生の方々も出演しています。
室 みなさんに出演していただいて、感謝しています。
−西田さんはこの撮影のために実際の稽古にも参加して、砂川選手の指導を受けたそうですね。
西田 わからないことだらけだったので、最後は個人レッスンをしていただきました。みなさん砂川さんを「怖い人」っておっしゃっていましたけど、とてもやさしかったです(笑)。私の動きをビデオを撮ってくださったり、いろいろな動きの順番を絵で描いて説明してくださったりしました。
−空手の動きは、どういった点で苦労しましたか。
西田 踏み込む足の動かし方ですね。空手の廻し蹴りは外から内に蹴りますけど、スケートは内から外に蹴るんです。今までそういった足の使い方をしたことなかったので、どうしてもバレエ風になってしまいました。
−実際のフィギュアスケートで空手の動きを取り入れるということはないんですか。
西田 男子選手の中には空手の道場に通っている人もいます。外国人の選手も習っているみたいです。何年か前のオリンピックでのカナダの選手のプログラムは、空手の雰囲気があるものでした。礼儀作法や呼吸法など、フィギュアと共通しているものもありますから、すごくためになりました。
−作品では親が子供をバックアップしているシーンが登場します。空手でも親子で取り組んでいるご家族が多いですが、その部分も共通していますね。
西田 フィギュアの場合は、ある程度の年齢になるまでご家族が導いてあげることが大切ですね。
 完成披露試写会で舞台あいさつをする室監督と出演者のみなさん
 音楽家・つんく♂さんが作詞・作曲を手がけた主題歌『MAP〜未来の地図〜』を、小川真奈さんが披露
 プロ野球の現役最年長選手である埼玉西武ライオンズの工藤公康投手が、西田さんを激励に駆けつけ、作中でも登場する青いバラの花束をプレゼント
−室監督にとっては初監督作品となります。作ったきっかけは何でしょうか。
室 自分でも10年くらい何か感じるものを探していた時期だったんですが、『伊藤みどりのフィギュアスケート・ライフ』というDVDの撮影で美和さんと知り合ったんです。たまたま雑談の中でプロフィギュアスケーターの方々が、オリンピックに挑戦するのは、理論的にはほとんどありえないということを美和さんからお聞きしたんです。それが劇画としてのおもしろさを可能にするし、映画として見た方に感動を与える題材になるんじやないかということで、美和さんにその話を持ちかけたのがはじまりですね。
−他の作品の構想もあったと思うんですが、第1作目となる作品でこのストーリーを選んだ理由はありますか。
室 他にも撮りたい作品はあるんですけど、今やらなきやいけないことはこれだと思ったのが一番の理由ですね。他のやりたいことは10年後でもできる。でも、この作品は今撮らなかったら、この先も一生やらないと思っだので。
−今やらなきやいけないと思われた具体的な理由は何ですか。
室 2010年はオリンピックでフィギュア人気がすごいんじやないかと思ったし、美和さんもどんどん歳とっていっちゃうし(笑)。この企画を立てた時に、ちょうど美和さんが40歳になったんですよ。だから、最初は美和さんが40歳になった記念くらいに考えていました。世間でも「アラフォー」という言葉があったりして、そういう意味でタイミングがすべて一致していたんです。
−実際、40歳でもう一度オリンピックを目指すというのは、むずかしいことなんですか。
西田 私は1%も考えていないです。あんなつらい世界はもう嫌です。無理です、ほんとに(笑)。
室 話題作りにやってみたら?
西田 骨折しちやいますよ(笑)。 −観客のみなさんには、作品から何を感じてもらいたいですか。
室 技術とは別の、自分を高めていく工夫や気力といったものは、どんなスポーツにでも通じることだと思うんです。僕は文化系の人間ですが、それはわかる。また、スポーツ以外のことにも通じることだと思うので、そこを見ていただけたらと思います。 西田 空手もそうだと思うんですけど、人それぞれ目標も違うので、年齢は関係ないと思うんです。あきらめないでその目標に向かってがんばっていただきたいです。あきらめなければ、きっといいことがある。作品を通して、それを感じていただきたいですね。 |